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みんなのコンサートメモ
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コンサートについて
演奏会プログラムを考える時、前半に古典派の小編成な純音楽を置き、後期ロマン派などモダンな楽曲を効果的に組み合わせる。または国民性や流派を統一することでコンテクストを与えるといった手法が通例であろう。
では今回の演目はどうか。すべての楽曲は20世紀初頭のほとんど同時期に書き上げられ、イギリス、フランス、デンマークと共通する言語を持たない作品たちが並ぶ。そこに時空のコントラストはなく秩序もない。ある意味で常軌を逸した羅列に垣間見えるものは、音楽家による表現行為への礼賛だ。
▼音と言葉
かつて音楽は言葉、とりわけ聖書に追従するかたちで歩を進めてきた。ところがある日「調性」が発見されると音楽は無限の表現力を獲得し、むしろ言葉に対してイニシアティブを取りうる分野として独立し、人類に創造の契機を与える。
既存の文学や絵画作品を一瞥しながら、調和とオーケストレーションによる至極の表現をもって、《海》は芸術大国=フランスの存在を雄弁する。凶暴なオリエンタリズムを抱いて万国に立ちはだかり、まるで我々が生まれた時から知っていた音楽であったかのような錯覚を与え、想像することさえ無力化しイメージで支配する。
同じ頃、自国での音楽的土壌に恵まれなかった男は、北の島国から海峡を越え地中海を臨んだ。それはどれほどに美しかったことであろう。背後にはアルプスがそびえ、地には歴戦の兵たちの血涙が滲んでいる。森羅万象を手中に収めた激情を言葉や写実に留めるにはあまりに陳腐であり、《南国にて》と五線に書き残す他なかった。
▼至上手段としての音楽
根源的な人類愛を代弁する《不滅》は、大陸が戦火に染まりはじめた時に姿を現した。何者にも奪取することのできない生命への意力、あるいは音楽への執念。音楽家が人間として地球上に叩きつけた決意は、同じく動乱の現代を生きる我々にも激しいエネルギーをもって訴えかける。
ドビュッシーは『言葉で表現できなくなった時、音楽がはじまる』と語ったが、情感の揺らぎや他の芸術から得るインスピレーション、普遍のヒューマニズムを体現する手段として音楽が持つ優位性を、今回の三曲は強烈に誇示する。音楽でしか表現できなかった、それを至上主義とした男たちの「音楽家だ馬鹿野郎」という声が聞こえてくるようなプログラムとなった。これは20年目へ向かわんとするユーゲントフィルの弛まぬ意欲の宣誓でもある
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