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コンサートについて
マーラーが5番の交響曲を書いていた1901年から翌年にかけて、彼の人生を一変させる出来事が起きています。それこそがアルマ・シントラーとの出逢いと結婚でした。才色兼備・自由闊達なアルマの存在は、それ以降のマーラーの創作に(正負両面で)極めて大きな影響を与えます。この曲はその最初の例であり、有名な「アダージェット」とそれに続く「ロンド・フィナーレ」からなる第3部に明瞭に聴き取れるように、その最も幸せな時期の空気を反映した作品だと言えるでしょう。
ここで更に1本補助線を引きましょう。第5交響曲が初演された1904年ごろ、1人の青年が作曲を学び始めます。彼の名前はアルバン・ベルク。帝立歌劇場の監督を務める傍ら、自作の大交響曲を次々と発表するマーラーは彼にとってのアイドルでした。師のシェーンベルクを介してマーラーと直接親交を得て多大な影響を受ける一方、その妻であるアルマと後々に至るまで親しい間柄であり続けました。
そしてブリテンです。ブリテンはそんな「マーラーに連なる作曲家」としてのベルクに憧れを抱き、直接師事することを望んでいました。が、ベルクは1935年に死去、その夢は果たされずに終わります。そんな中、1936年にバルセロナで開催された国際音楽協会の世界大会で、カタルーニャ人ヴァイオリニスト、アントニオ・ブローサに出会うとともに、まさに前年に亡くなったベルクの遺作であるヴァイオリン協奏曲の世界初演に立ち会ったのでした。そう、ブリテンのヴァイオリン協奏曲は、これらの出来事がなければ書かれえなかった作品なのです。
ちなみに、ベルクのヴァイオリン協奏曲には「ある天使の思い出に」との献辞がありますが、この「天使」とは、アルマがマーラーの死の直後にそれ以前から不倫関係にあった建築家グロピウスと再婚してもうけた娘マノンのこと。斯くしてマーラーからブリテンに至る因果の円環は閉じられるのです。
さて、もともとマーラー成分多めの私たちですが、ブリテンもここ10年程の間に3曲を取り上げるなど。急激に演奏頻度が高まってきた作曲家。今回のプログラムはそんな2人の作品を組み合わせた、いわば最新版「水響の切り札」と言えるでしょう。ソリストとしてはバルトーク・プロ以来2曲目の共演となる、西江辰郎さんを迎えた盤石の態勢でお送りします。
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