栗原麻樹ピアノリサイタル
2023年05月16日(火) 19:00開催
プーランク:3つのノヴェレッテ
プーランク:ナポリ
ラフマニノフ:幻想的小曲集 作品3より
ラフマニノフ:楽興の時 作品16
ツイッターで麻樹さんを知り、投稿された演奏動画に惹かれ
、CDを購入し、とうとうこの日、コンサートで生の演奏に触れた。SNSにその素晴らしいコンサートの感想が溢れていて、ほんとうに全くその通りである。ここではそれに付随する自分なりに思ったことを書いてみたい。麻樹さんはツイッターでは本当によくファンの方々と交流されている。ここ、順番を間違うとよくないところで、ファンの方々とよく交流されているピアニスト、ではなく、あれ程の音楽を奏でるひとが、さらにファンの方をSNSを通して大切にされている。もっと具体的には、誰が麻樹さんにどんなコメントをしたか、について、演奏する楽譜を暗譜するのと同じくらい大事に覚えている印象がある。するとどんなことが起こるかというと、客席の雰囲気が、ほぼ全部、麻樹さんの演奏を聞きたくて聞きに来ている、その純度が凄く高い、客席の雰囲気になる。どういうことか。「有名だから」とか「クラシックを聴くことがステータスだから」とか「演奏そのものよりも、休憩時間での、他のステータスのある方々との挨拶や交流や人脈の確認や、人脈の自慢や、新たな人脈の布石のほうが大事」みたいな人が、いなくなる。いや、少しはいるのかもしれないけど、純粋に聞きたいという方に飲まれてしまう。グレン・グールドがもし生きていて、麻樹さんの活動と演奏を知ったら、コンサート会場での演奏に復帰するのではないだろうか。 それから。麻樹さんの師事したピアニストに故・中村紘子氏の名前がある。1970年生まれの自分がピアノを志す時に、日本にいて絶対的に無視できない存在感のある人だった。自分は氏の演奏はあまり好きではなかった。しかしNHKのレッスン番組は食い入るように見ていたし、初めて購入した「展覧会の絵」のレコードも氏の演奏によるもので愛聴していた。麻樹さんもCDに「展覧会の絵」を収めていて、そこは出藍の誉れ、麻樹さんの演奏の方がずっと音色も多彩でフレーズも柔軟で熟成している。中村紘子氏はピアニストとして活動することの、覚悟や可能性と限界について非常に自覚的で、それを自らの行動によって示して、日本のピアノ界が世界に通じるためにはどうしたらいいかを死ぬまで実践しつづけたひとであった。それは地域に根ざした町工場から出発したとしたら、世界的に通用する技術を磨き、国際的な企業になりなさい、といっていたのかなあ、とも。
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