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笑顔と情熱の先にある楽しさ ヴァイオリニスト・指揮者 西谷国登が魅せる「背中」

2024/07/26

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ヴァイオリニストとして世界で活躍する傍ら、指揮者としてユースオーケストラ・市民オーケストラの指導にあたる西谷国登さん。公式サイトやブログも自身で運営するなど、多岐にわたるエネルギッシュな活動の源はどこにあるのでしょうか。お話を伺いました。

——ヴァイオリンを始めたきっかけはなんだったのでしょう。

テオ・サラザン
撮影:井村重人

西谷父親が学生オケ・アマチュアオーケストラでコントラバスやヴィオラなどを演奏していたことに加え、舞台芸術好きな母親が「一芸は身を助ける」という考え方だったことから、3歳でピアノ、5歳でヴァイオリンを始めさせてくれました。

また、母親の実家が留学生を受け入れるホストファミリーをしていたご縁で、ヴァイオリンを弾く留学生がいたことも大きかったようです。そして、小学生から高校まで地元のジュニアオーケストラ、中学校ではブラスバンド部に所属していたこともわたしの音楽好きに影響しました。

——高校卒業後、渡米されてポートランド州立大へ進学されました。

西谷恩師の故・田中千香士先生(元東京芸大名誉教授・NHK交響楽団コンサートマスター)には「音楽で食べていくには英語は必須!」と叩き込まれていました。ヴァイオリンを弾くホストファミリーで受け入れていた元留学生との交流も続いていたんですね。そのご縁で、米国オレゴン州ポートランドのオーケストラと共演する機会を得ました。

たまたま州立大の関係者が聴きに来ていて、演奏を喜んで大学の教授に推薦してくださったのです。そこから進学への道筋が開けました。在学中に、東京クヮルテットというニューヨークを拠点に活動していた世界的弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者、マーティン・ビーヴァー教授がポートランドでマスタークラスを開いたことがあり、受講後「ニューヨークに来ないか?」と誘ってくださり、ニューヨーク大大学院に進学することになりました。

アメリカでは、本当にいろいろなご縁がつながり、色々と経験し学ぶことができました。大学・大学院のオーケストラに所属しながら、ソロリサイタルも開き、演奏活動は充実していました。

——2010年に帰国され、活動拠点を日本におかれることになったんですよね。

西谷アメリカでは複数の大学で非常勤・客員講師を務めていましたが、2001年の「9・11」(アメリカ同時多発テロ事件)以降、「音楽家」というだけではビザも降りづらくなっていて、思い切って国内に拠点を移すことにしたんです。

元々、「斎藤秀雄指揮法」を紙谷一衛先生に、アメリカの指揮法をキース・クラーク先生について指揮の勉強もしていて、アメリカでもたまに指揮活動をしていました。そんな経験から帰国後、2つのオーケストラを立ち上げようと、東京でバイオリン教室を開校しました。まずは、英語を武器に東京の有名なインターナショナルスクールや大使館関係者に営業をかけて足で売り込みました。

ただ、3ヶ月で十数人ほど生徒が集まったところで、東日本大震災が起きて、ほとんどの外国人生徒が国へ帰ってしまったのです。それで改めてヴァイオリンの指導をしながら、生徒を含め数十人人を集めて、東京都練馬区を拠点に市民オーケストラ「石神井Int’lオーケストラ(通称石オケ)」とジュニアオーケストラ「クニトInt‘lユースオーケストラ(通称クニトオケ)を2013年に立ち上げました。

——スピード感がすさまじいですね。どちらも「弦楽オーケストラ」ということですが、それぞれのオケの特徴はどういったところですか。

西谷市民オケの石(しゃく)オケは、初心者から音大を卒業された方もいまして、基本は「楽しんで成長したい方」というのが入団の条件です。2週に1回の練習ですが、車を運転して関東の外から長時間かけて来てくださる方もいます。市民オケですが、要求は高度ですので、それを楽しみながらやれるメンバーが活動していますね。

ユースオケのクニトオケは幼稚園の年長さんから高校3年生が対象で、もともと生徒を中心に結成しましたが、現在では生徒以外のメンバーも結構います。個人レッスンだけでヴァイオリンをずっと練習してきている子どもたちは、日々の個人練習でストレスを抱えがちなので、オケで仲間を作り、ソロとは違う合奏という形で演奏そのものを楽しんでほしい、という思いがあるんですよね。

こちらは都内・横浜などからが多いですが、関西方面から来られている方もいます。親御さん同士も仲良くなって、情報交換や愚痴なんかも言って和気あいあいとしています。

——演奏活動も活発ですね。

西谷石オケ・クニトオケとも、今年(2024年)5月の定期演奏会が節目の10回目でした。各パート別にプロ講師の指導を受けつつ練習を重ね、米・イリノイ大のルドルフ・ハケン教授との共演を果たすなど、難曲にも取り組んで大成功を収めたと自負しています。

実は、コロナ禍となってすぐ、活動中止を決断し、団員は一時半減したんです。活動を再開し、パンデミック以降3回目の演奏会となったのですが、団員数の回復とともに、楽しさも質も向上しました。指揮台に立った時、その景色に改めて感動しました。

——レッスンしている生徒さんも多数いらっしゃり、順番待ちの方も多いとか。

西谷おかげさまでバイオリンのレッスンは順番待ちの方がいらっしゃる有り難い状況です。レッスンは、いわゆる「マイナスを0にするためにミスを無くしていったり基礎を繰り返す」だけの指導法ではなく、アメリカで培った「プラスをほめて伸ばしていく」指導法です。言うことは結構スパルタで厳しいかもしれませんが、それを怖がらせたり怒鳴ったりするのではなく、思いっきり笑顔で楽しく情熱を持って伝える。良いところは全力で褒める。

そうすれば、楽しさが増し、大変でも続けていけるのかなと思います。そんなレッスンでは、優しすぎるのではないか。と思われる方もいるかもしれませんが、たくさんのコンクール受賞者が輩出し、結果を出してこのやり方でやってきた自信も実績もあります。やはり何のために音楽・ヴァイオリンを続けているのかを見失わないように「盛り上がるような楽しさ」は必須だと思っています。

実は、レッスン中、親御さんにも全力で褒めます。親子で煮詰まってしまうと苦しいですし、親御さんを褒めることで間接的にこどもである生徒に想いが伝わることも大切だと思っています。

そういった演奏や指導への思いを著書「ヴァイオリン自由自在」や、全4巻の国登ヴァイオリン教本にも込めています。やみくもに練習するのではなく、テクニックを具体的にイメージしたり、やる気を向上させたりといった方法も紹介しています。突然宣伝になってしまいすみません(苦笑)

——ご自身の公式サイトはもちろん、ブログ、Youtubeなど多岐にわたる発信をご自身でなさっていることにも驚きました。

西谷ニューヨークでの大学院時代、「いかにして音楽家として生活していくか、自己アピールしていけるのかも大切だ」ということを叩き込まれました。ニューヨーク大学には、そのための最先端の授業がありまして、授業の中では、宿題で名刺を作ったり、サイトを作ったり、自己アピールのスピーチを練習したりするんです。

音楽家って、特に演奏会前は音楽に集中しているし、普段から音楽以外のことは極力考えたくないものだと思います。でも、音楽家として生きていくためには、マーケティングもブランディングも必要なので、そこは演奏活動と切り離して行わなくてはなりません。

Youtubeもコロナ禍で時間ができた時に独学で動画や画像の編集を学びながら制作しました。演奏動画はもちろん、音楽家へのインタビューなども載せています。よろしければ是非アクセスください!チャンネル登録もお待ち申し上げます!また宣伝になってしまいました。スミマセン(苦笑)

——これだけご多忙な中、ご自身の演奏活動も充実されていますね。

西谷直近だと8月4日に、音楽高校時代の同級生の招きで長野県岡谷市でカノラータ・オーケストラと共演、10月にはアメリカでビーバトン交響楽団の定期演奏会にソリストとして共演します。その間にコンクールや発表会、それに試演会もあり、国内外を飛び回っていますよ。

その中でも特に力を入れているのは、2014年から隔年で始めた、浜離宮朝日ホールでのリサイタルシリーズです。2022年の自身通算10回目のソロリサイタルからは毎年、浜離宮朝日ホールでの演奏を続けています。今年は11月23日(祝)にブラームスの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77」を自身で弦楽オケ版に編曲したものを世界初演します。

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」より『冬』、バッハの無伴奏、パルティータ第2番「シャコンヌ」というプログラムで、若干玄人好みかもしれませんが、楽器を演奏される・学ばれている方にはもちろん、そこは聴いている方に楽しんでいただける演奏会にしますので、クラシックにあまりなじみのない方にも安心してお越しいただければと思います。

今回は、石オケ・クニトオケで指導をしてくださっている講師陣のメンバーを中心に編成されたプロ演奏家とコンチェルトリサイタル形式で演奏しますので、石オケ・クニトオケのメンバーにも、普段指導者としてかかわっている演奏家たちのコンサートを、存分に聴いてほしいですね。

第12回西谷国登ヴァイオリンリサイタル

日時:2024年11月23日(土) 14:00開演

場所:浜離宮朝日ホール 音楽ホール

詳細/チケット購入 : https://www.concertsquare.jp/blog/2024/2024011933.html


コンサート概要

第12回西谷国登ヴァイオリンリサイタルが、この秋、浜離宮朝日ホールで開催されます。今回は「コンチェルトリサイタル第3弾」として、J.ブラームス、J.S.バッハ、A.ヴィヴァルディの名作を演奏します。特に注目は、ブラームス作曲のヴァイオリン協奏曲ニ短調の弦楽オーケストラ版で、これは世界初演となる歴史的瞬間です。西谷国登の繊細で情感豊かな演奏に加え、室内オーケストラの素晴らしいアンサンブルが楽しめます。バッハの「シャコンヌ」やヴィヴァルディの「四季」から「冬」の演奏も期待大です。この秋、心揺さぶる音楽の旅に出かけませんか?チケットはファミリーマート、コンビニ、イープラスチケットで購入可能です。お見逃しなく!

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——精力的な活動の源はどこにあるんでしょうか。

西谷わたし自身、ヴァイオリン奏者、指揮者、指導者、コンクール審査員など音楽にまつわる様々な活動に関わらせていただいておりますが、生徒たちや若い世代の方達にその背中を見せることで「ひとりの音楽家として参考にとなる姿を見せたい!」と考えております。後輩たちにいい背中を見せ、いや「魅せ」られるよう、これからも走り続けたいと思います!

撮影:井村重人
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西谷国登

ヴァイオリニスト 指揮者

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コンサートスクウェア事務局

中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています