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「桜咲く音楽の未来」――伊藤万桜が挑むクラシック音楽の新境地

2024/12/06

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「クラシック音楽の可能性を広げたい」――そう語るのは、進化し続けるヴァイオリニスト、伊藤万桜さん。3歳でヴァイオリンを始め、10代から国内外の舞台で活躍。ファニー・メンデルスゾーン国際コンクール2022 プロフェッショナルヴァイオリン部門第1位をはじめ、数々の受賞歴を誇ります。その演奏は、真摯かつ自然体な美しさを追求しながらも、常に革新と挑戦を続ける姿勢で評価されています。

今回は、伊藤さんが取り組む「裾野を広げるクラシック音楽」への挑戦と、新たなトリオ編成による音楽開拓への想いに迫るべく、インタビューの場を設けました。クラシックの伝統を大切にしながらも、現代に響く新しい音楽の形を模索し続ける彼女の情熱と哲学をお届けします。


伊藤万桜(Mao Ito)
国内外で活躍するヴァイオリニスト。3歳でヴァイオリンを始め、都立芸術高校、東京音楽大学、同大学大学院を経て研鑽を積む。学生時代からフランス、ドイツ、イタリアをはじめとする各国の音楽祭やマスタークラスに参加し、国際的な舞台で演奏活動を展開。2022年にはファニー・メンデルスゾーン国際コンクールプロフェッショナルヴァイオリン部門第1位を受賞。

クラシック音楽の裾野を広げる活動を理念に、大手町KDDIホールでの0歳から入場可能なコンサートや、ヴァイオリン・サクソフォン・ピアノという新しい編成のトリオを中心に、多彩なアプローチで音楽の可能性を追求。現在は東京オペラシティリサイタルホールでのリサイタルを活動の軸にしつつ、後進の育成にも力を注いでいる。地域や世代を問わず、誰もがクラシック音楽を楽しめる場を提供し、次世代の音楽シーンを切り拓く存在として注目されている。

——まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか?

伊藤ヴァイオリニストの伊藤万桜と申します。3歳からヴァイオリンを始め、現在、フリーの演奏家として活動しています。ヴァイオリンを始めたきっかけは、両親がヴァイオリンコンサートに感動して「子どもができたらヴァイオリンをやらせてみたい」と思ったことが始まりでした。

——少し余談になるのですが、「万桜」というお名前がとても素敵だと感じました。名前の由来について教えていただけますか?

伊藤ありがとうございます。私の名前は「万桜」と書いて「まお」と読むのですが、「万」という文字には「万国」や「世界中」という意味が込められています。「桜」は日本らしさを表していて、世界に通じる存在であってほしいという願いが込められていると聞いています。

私のWebサイトには、”Japanese cherry blossoms blooming all over the world.”というメッセージを掲げているのですが、名前に込められた思いを忘れず、音楽活動を通じて国内外の多くの方々の心に響く演奏を続けていきたいと思っています。

——素敵な意味が込められた素晴らしいお名前ですね。3歳から音楽を始めたとのことですが、これまでのご経歴や活動についても簡単に教えてください。

伊藤都立芸術高校を卒業後、東京音楽大学、そして大学院で学びました。在学中から国内外のマスタークラスや音楽祭に参加し、フランス、ドイツ、イタリア、カナダなどで演奏活動を行っています。文化庁主催の東京文化会館での新進演奏家育成プロジェクトによるリサイタルが好評を博し、現在は、東京オペラシティリサイタルホールでのリサイタルを軸に、0歳から参加できるコンサートや、ヴァイオリン・サクソフォン・ピアノのトリオでの活動に力を入れています。

また、2021年からは、この編成にてサン=サーンスの死の舞踏、ラヴェルのピアノ三重奏曲、ブラームスのピアノ三重奏曲第3番など、編成の枠を広げる試みに挑んでいます。

——ヴァイオリン・サクソフォン・ピアノのトリオというのは随分珍しい編成ですね。

伊藤この編成は世界的にもかなり珍しいんです。例えば、私たちのトリオが演奏した『夢の色彩』という楽曲は、もともとこの編成のために書かれたものですが、ナクソス・インターナショナルでは世界でまだ2例目くらいなんです。そういう新しい挑戦をすることで、音楽の可能性を広げていけるというところに魅力を感じています。

ただ、珍しい編成がゆえに、楽譜の面で苦労することが多いです。このトリオ編成のためのオリジナル楽譜が非常に少なく、作曲者に直接お願いして譜面を入手することもあります。また、サクソフォンは種類によって音色や特性が異なるので、一つのコンサートで複数の楽器を使うことが必要になる場合もあります。来年リリース予定の新しいアルバムのレコーディング時には、サクソフォン奏者がソプラノ・アルト・テナー・バリトンの4本を用いて演奏しました。来年5月23日に東京オペラシティリサイタルホールにて発売記念コンサートを開催しますのでどうぞお楽しみに!!

——とてもチャレンジングな取り組みなんですね。楽譜面など、困難なことが多くても、活動を続けられるモチベーションは何でしょうか?

伊藤単純に「新しいものを作りたい」という思いです。この編成を通じて、新しい音楽の形が定着し、次世代の音楽家がこの編成で自由に活動できる環境を作りたいんです。今はまだ「珍しい」と言われるかもしれませんが、これを普通に感じてもらえるようになるまで広めていきたいですね。

——開拓者精神が素晴らしいですね!2024年12月13日に「夢の色彩 2024 CHRISTMAS SPECIAL」が開催されるとお聞きしましたが。このコンサートについて詳しく教えていただけますか?

伊藤「夢の色彩 2024 CHRISTMAS SPECIAL」は、先ほどお話しした『夢の色彩』という曲を中心に、ラヴェルの「ピアノ三重奏曲 イ短調」や、デュカスの「魔法使いの弟子」、ピアソラの「リベルタンゴ」など、多彩な楽曲を演奏します。
『夢の色彩』は、ドフォンテーヌ作曲のとても美しい曲で、このトリオ編成のために書かれたオリジナル楽曲です。フランスの音楽らしい儚さと調和が魅力で、この編成の個性を存分に生かした作品だと思います。

今回のコンサートは、私たちの息の合ったアンサンブルや、クリスマスならではの特別な雰囲気を味わっていただける内容になっています。普段クラシック音楽に親しみがない方にも楽しんでいただけると思いますので、ぜひご家族やご友人と一緒にお越しください。会場は練馬文化センターです。皆さんと素敵な時間を共有したいと思っています!

夢の色彩 2024 CHRISTMAS SPECIAL

日時:2024年12月13日(金)19:00開演  

場所:練馬文化センター小ホール (東京都)

詳細 : https://maoito.info/2024/08/06/2024-12-13%ef%bc%88%e9%87%91%ef%bc%89ishoku-trio/


トリオの1stアルバムタイトル曲の「ドフォンテーヌ:夢の色彩」(ナクソスで世界2枚目)を始め、ピアノ黒岩航紀・ヴァイオリン伊藤万桜・サクソフォン陬波花梨の稀少な編成による美しいハーモニーを生かした、世代を問わずお楽しみいただける、クリスマスムードも味わえる贅沢プログラムとなっています。

息の合った3人の超絶技巧が醸す絶妙かつ新鮮な音楽の世界を披露します。2021年より、銀座ヤマハホールや2度の軽井沢大賀ホール、新宿文化センター、九州や会津等での公演を重ねてきたトリオによるクリスマススペシャル公演!

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木邨清華pf伊藤万桜vn デュオリサイタル

日時:2025年2月23日(日)14:00開演

場所:東京オペラシティリサイタルホール (東京都)

詳細 : こちらをご覧ください


軽やかで美しいメロディが散りばめられ、ベートーヴェンのメロディメーカーとしての才能が遺憾なく発揮された見事な統一感ある大家30歳のヴァイオリン・ソナタ第5番「春」。

そして、フランクを継承しつつも25歳で夭折したルクーが名ヴァイオリニストのイザイの委嘱で残した、輝く光へ向かって駆け抜ける22歳の唯一のヴァイオリン・ソナタ。

オペラシティでは初共演となるピアノ木邨清華とヴァイオリン伊藤万桜のデュオが「春への憧憬」と題して、冬から春へと巡りゆく季節にふさわしい、瑞々しい光と情熱に満ちた2つのソナタをイザイの小品とともに披露します。

連続5回目となる今回は、伊藤のオペラシティリサイタルシリーズの中では最も共演歴の長いピアニスト木邨を迎えます。古典からロマン派を中心に紡いできた曲は数え切れず、特にこの数年はデュオのハーモニーに厚みと深みの手応えを感じているという、ドイツとフランスで研鑽を積んできた若き二人の熟成された音楽にご期待ください。

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——公演が待ち遠しいですね!また、先ほどお話にあった0歳から参加できるコンサートもユニークですが、取り組みの背景を教えていただけますか?

伊藤大手町KDDIホール様の協賛で、今回で10回目となる0歳~の音楽と映像のファミリーコンサートを開催しています。音楽に触れるきっかけを多くの人に提供したいという思いから始めました。映像と音楽を組み合わせたり、スイーツを楽しむイベントを取り入れるなど、多様なアプローチでクラシック音楽の裾野を広げることを目指しています。

取り組みの中で一番印象に残っているのは、ベビーカーで来場されたお子さんや車椅子の方々もたくさんいらっしゃって、普段クラシック音楽に触れる機会が少ない方々と直接つながりを持てたことです。演奏中にお子さんが手を叩いて反応してくれたり、帰り際に「また来たい」と声をかけていただいたりしたことが、とても励みになりました。

——とても素敵な思い出ですね。今後、挑戦したい新たなプロジェクトや目標についても教えてください。

伊藤今の目標は、東京オペラシティリサイタルホールでのリサイタルをさらに発展させていくことです。毎回テーマや演目を変えて新しい挑戦をしていますが、これらを通じてもっと多くの方にクラシック音楽の魅力を伝えたいですね。また、4年ほど前から始めたヴァイオリン教室では老若男女の生徒さんを完全個人レッスンで指導していますが、ヴァイオリンにより親しめるような環境を充実させていきたいです。

——最後に、読者の皆さんに伝えたいメッセージをお願いします。

伊藤クラシック音楽というと「敷居が高い」と感じる方も多いかもしれませんが、実際は誰にでも楽しんでもらえるものだと思います。私のコンサートは、初めてクラシックに触れる方も、長く親しんでいる方も楽しんでいただけるような内容を心がけていますので、ぜひ気軽に足を運んでいただけたら嬉しいです!

•伊藤万桜サイト https://maoito.info
•MAOヴァイオリン教室 https://maoviolin.fun

——本日はありがとうございました!

(インタビュー・構成/松永華佳)

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