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2024/12/30
サクソフォンという楽器の新たな可能性を追求し続ける菊地麻利絵さん。ソプラニーノサクソフォンに特化した演奏家として、オリジナル作品を携えてリサイタルを開催するなど、まさに道なき道を切り拓いています。その演奏活動は、日本国内だけでなく海外でも高い評価を受けています。 今回は、1月13日に控えるソプラニーノサクソフォンリサイタルVol.2「閃音/佇音」に向けた意気込みや、彼女の音楽観、これまでの歩みについてお話を伺いました。
——ソプラニーノサクソフォンという、まだあまり知られていない種類のサックスに特化して活動されていますが、その背景にはどのようなきかっけや思いがあったのでしょうか?
菊地ソプラニーノサクソフォンとの出会いは、大学在学中にサクソフォン科の演奏会で担当したことがきっかけでした。最初は、その操作の難しさに驚きました。音程の調整が非常に繊細で、小さい楽器特有の扱いづらさもあり、まさに「世話の焼ける子」という印象でしたね。 しかし、演奏するうちに、その明るくキラキラとした音色や、時には鋭く突き刺さるような音に魅了されていきました。そして、「この楽器にはまだまだ可能性がある」と感じ、私自身がその道を開拓しようと決意したんです。
——ソプラニーノサクソフォンの魅力はどんなところですか?
菊地ソプラニーノは、他のサクソフォンにはない特徴的な音色を持っています。明るくてキラキラとした高音域の響き、可愛らしい音色、そして時にピンと張り詰めた鋭い音など、多彩な表現が可能です。また、クラシックサクソフォンとしての演奏では、楽器の繊細さや操作性の難しさが演奏の醍醐味となります。
——来年1月には、リサイタルを控えていらっしゃいますよね。「閃音/佇音」というタイトルが印象的ですが、どのような思いが込められているのかを教えてください。
菊地麻利絵ソプラニーノサクソフォンリサイタル Vol.2 ~閃音/佇音〜
日時:2025年1月13日(月)14:00開演
場所:スペースDo(管楽器専門店ダク地下) (東京都)
詳細 : https://www.concertsquare.jp/blog/2025/202408237.html
前代未聞のソプラニーノサクソフォン1本で演奏するフルリサイタルの第二弾! 世界初演がなんと5作品。時には閃光のように突き刺せるような音を奏で、またある時はその場にとどまるような、佇立した音をイメージさせるソプラニーノの特徴を、「閃音・佇音」と表しタイトルに。
菊地このタイトルは、ソプラニーノの特徴を表した造語です。「閃音」は、鋭く突き刺さるような「閃光」という言葉を音に例えたイメージ、また「佇音」は、その場にとどまる意味を持つ「佇立」という言葉を置き換え、余韻を感じさせるような音に例えて表しています。 ソプラニーノサクソフォンは、小さな楽器でありながら、その音色には広がりと深みがあります。この楽器の持つ二面性をタイトルに込め、リサイタル全体を通してその魅力をお届けしたいと思っています。
——ソプラニーノサクソフォンの魅力が詰まった素敵なタイトルですね。リサイタルではどのような曲を演奏するのでしょうか?
菊地リサイタルの準備を進める中で、ソプラニーノサクソフォンのために書かれたオリジナル作品が極端に少ないことに改めて気付きました。以前の第一回リサイタルでは、フルートやピッコロの曲をソプラニーノで演奏しましたが、「やはりサクソフォンのために作られた曲が一番その楽器の特性を活かせる」と実感したんです。 そこで、これまでご縁のあった作曲家の方々に相談し、5人の作曲家に新しい曲を委嘱しました。今回の「閃音/佇音」では、ソプラニーノサクソフォンのために書かれた貴重な既存の2曲と、世界初演作品を5曲お届けします。 作曲家の方々には、ソプラニーノという楽器の特性、イメージを元に自由に書いてくださいとお伝えしました。それぞれの方が持つ音楽性と、ソプラニーノの音の可能性が融合して、新しい音楽の世界が生まれたと思います。このリサイタルで、それらの作品をお届けできることが本当に楽しみです。
——より多くの方にソプラニーノサクソフォンの魅力や素晴らしさが伝わるようなリサイタルになりそうですね。菊地さんはフランス留学の経験もお持ちですが、その経験は現在の音楽活動にどのような影響を与えていますか?
菊地留学中は、練習だけでなく、多くの教会を巡ってオルガンや合唱のコンサートを聴きました。教会特有の響きや雰囲気が印象的で、その経験がクラシック音楽への新たな視点を与えてくれました。 例えば、バッハを演奏するときには、教会で聴いたオルガンの響きを思い浮かべながら演奏しています。 また、パリの街自体も芸術や音楽で溢れていて、路上演奏や美術館での日常的な体験が、私の音楽観を広げてくれたと思います。
——音楽が生活に根ざした環境ですね。その経験が菊地さんの音楽にも影響を与えているのでしょうね。フランス留学中、特に印象に残っている出来事はありますか?
菊地フランスで過ごした2年間は本当に濃密な時間でしたが、特に印象深いのは住んでいた地域の駅名が私の名前と同じ「Pont Marie(ポンマリー)」だったことです。初めてその名前を見たときは驚きましたね(笑)。そこから「自分に縁のある場所なんだ」と勝手に思い込んでいました。 パリの中心部にあるセーヌ川沿いの地域で、週末になると、観光客や地元の人たちでにぎわう場所でした。街角ではアコーディオン奏者が音楽を奏でたり、路上にピアノやコントラバスが突然現れるような、本当に音楽が溢れる場所でした。
——まるで映画のワンシーンのようですね!現在はご自身の演奏活動以外に、大学での指導もされていますが、レッスンで特に大切にされていることをお聞かせください。
菊地一番大切にしているのは、生徒一人ひとりに合わせた具体的なアドバイスをすることです。私自身も不器用で、試行錯誤を重ねてきたので、生徒がつまずいているポイントを見極め、的確な解決策を提示することを心掛けています。 また、論文執筆を通じて音楽を理論的に分析するスキルを磨いたことが、指導にも役立っています。感覚に頼るだけでなく、具体的な体の使い方や音の出し方を伝えることで、生徒がより効果的に上達できるようサポートしています。
——音楽的な感覚や勘だけでなく、論理も大切にされているんですね。最後に、この記事を読んでいる方々、そしてリサイタルに興味を持っている方々にメッセージをお願いします。
菊地ソプラニーノサクソフォンはまだまだ未知の可能性を秘めた楽器です。だからこそ、その可能性を広げていく面白さがあります。次のリサイタルでは、その多彩な魅力を存分にお伝えしたいと思っています。クラシック音楽や管楽器が好きな方、新しい音楽体験に興味がある方、ぜひ会場でお会いしましょう!
——素晴らしいお話をありがとうございました!
(インタビュー・構成/松永華佳)
東京音楽大学サクソフォン助教。
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています