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2025/01/10
クラシック・ギター界のフロントランナーであり続ける福田進一が、朋友であり世界的名手として知られるエドゥアルド・フエルナンデスを迎えてのゴージャスなデュオ・コンサートが、この1月に国内3ヶ所で開催。さらに、高解像度384Khzで録音されたアルバムも同時にリリースされるという。 ファン垂涎のコンサート直前、このタイミングに、福田進一氏にお話をお伺いすることができた。
——1995年以来30年に亘り世界各地でデュオのコンサートを開催されてきたとお聞きしています。世界的なギタリストのお二人が出会ったきっかけを教えていただけますか。
福田エドゥアルド・フェルナンデスは私にとって大先輩であり、同世代のギタリストの中では群を抜いた存在でした。彼の1975年のパリ国際ギターコンクールでの名演を忘れることは出来ません。私は自分がその6年後、1981年に同じコンクールに出場し優勝できたことを、当時は奇跡のように思ったものでした。 1995年に東京でアランフェス協奏曲で有名な作曲家ホアキン・ロドリゴを讃えるコンサートがあり、フェルナンデスがソロ・リサイタルの最後にロドリゴの二重奏の名曲「トナディーリャ」を加えることになり、私はそのパートナーに選ばれました。さらに別の日には「アンダルシア協奏曲」の日本初演でも共演し、その時に自分たちの相性の良さに驚いたのです。互いにウルグアイと日本という地球の真裏に位置する場所に生まれ、カルチャーもギター奏法も異なるふたりが、ほとんどリハーサル時間のないタイトなスケジュール下でもピッタリとアンサンブルができたのはある種の快感でした。 この共演がきっかけで、その3年後の来日で日本コロムビアによる最初のデュオ・アルバムを作ることができ、その後は中国、台湾、韓国、さらに中米のキューバ、コロンビア、南米のブラジル、アルゼンチン、彼の母国ウルグアイ、そしてヨーロッパはスウェーデン、フィンランド、ドイツ、チェコなどなど…世界各地で演奏してきました。
——この30年間デュオを続けてこられて、お互いの演奏に変化はありましたか。
福田お互いが「ソリスト」なので、強い個性を持っていますから、そこを変えることはありません。特に音色などは、お互い独特なタッチなので譲り合うことはあまりないでしょう。 しかし、音楽的には毎回会うごとに影響を与えあっていると思います。特に、バロックや19世紀のギター音楽に関しては、今では共通認識に基づいて、私たちには以心伝心の解釈があり、ほとんどの作品へのアプローチは実にスムースです。議論はしますが、喧嘩にはなりません。
——デュオの醍醐味はなんでしょうか。
福田「音楽で語り合うこと」に尽きると思います。ギター・デュオの強みと言えば、同時に12個の音を出せる(6弦×2)ということで、上手くやればピアニストより多彩な表現も可能です。
——凄い可能性を秘めていますね、ますます興味が湧いてきました。ところでソリストとして著名でいらっしゃるお二人、スケジュールを合わせるのが大変なのではないでしょうか。
福田それはとても難しく苦労してきましたが、幸い世界各国にさまざまなギターフェスティバルがあって、そこからの出演以来が大半です。昨夏はチェコのブルノ国際フェスから招聘されました。 そういえば一度、ギリシャのオーケストラから招ばれて、ふたりとも別々にコンチェルトを弾いて帰ってきたことがあって、悔しい思いをしたこともあります笑
——今回 Hakuju Hallのコンサートでは、マチネで「ソロ・コンサート」とソワレで「デュオ・コンサート」が開催さるという贅沢な仕立てですね。それぞれのプログラムの特徴を教えて頂けますか。
福田このニューイヤー・コンサートは現代ギター社の主催で25年以上続けているものです。いつも私のソロか、私を中心にしたアンサンブル企画なのですが、今年はフェルナンデスの来日と重なったので、二本立てのプログラムになりました。 私のソロはとにかく名曲、それも私がセレクトしたギター名曲のオンパレード、そしてデュオは今回のアルバム「二人の友」を全てライブで表現したいという想いの詰まった内容です。
——同時にデュオ・アルバム「二人の友」も発売されますが、コンサートとレコーディングの大きな違いはなんでしょうか。
福田それは「鮮度だ」と思います。結局のところ、レコーディングはライブには勝てない。視覚的な要素や、会場の雰囲気がありませんから。しかし私は、だから逆に余計な、無駄な感覚を削り落として、楽音と真剣に対峙できるという素晴らしい側面がレコーディングにはあると思っています。レコーディング時に関しては良い演奏をしようという姿勢はライブと同じです。 ただ、何度も繰り返せることからイージーな内容になったり、作為的な、人工的な演奏にならないよう気をつけます。その上で先に申しました「鮮度」はその時の空間の響きであったり、ポスト・プロダクション、編集の腕で大きく変わってきます。
——芸術として、どちらも奥が深いですね。リスナーとしては双方を体験したくなってきました。その今回のアルバムの聴き所を教えていただけますか。
福田マイスター・ミュージックのマイクロフォン「エテルナ・ムジカ」がワンポイントで捉えた、ハクジュ・ホールの美しい音響空間の中で、私たち二人のギターの織りなす豊かな響き、そして演奏の「多幸感」を楽しんでいただきたいです。
——大変貴重なお話、ありがとうございました。
エドゥアルド・フエルナンデスの来日は数少なく、二人のデュオを日本で聴くことが出来る千載一遇の機会。どうぞみなさま、今回のコンサート、お聴き逃し無きよう。 <黒田 檀>
福田進一 ニューイヤーコンサート 2025
日時:2025年1月18日(土)13:00開演、16:00開演
場所:Hakuju Hall (東京都)
詳細 : https://hakujuhall.jp/concerts/event/4103
【出演】 福田進一、エドゥアルド・フェルナンデス(以上、g) 【ソロ・リサイタル:~ギター名曲選2025~】 13:00開演 横尾幸弘:さくら変奏曲 J.S.バッハ:プレリュード(チェロ組曲第1番より) 他 【デュオ・リサイタル:デュオ・アルバム「二人の友」発売記念!】 16:00開演 スカルラッティ:ソナタ ホ短調 K.213 ソナタ イ長調 K.492 他
エドゥアルド・フェルナンデス&福田進一 ギター・デュオ・リサイタル
日時:2025年1月24日(金)19:00開演
場所:静岡音楽館 (静岡県)
詳細 : https://www3.aoi.shizuoka-city.or.jp/concert/detail.php?y_yoyaku_day_uid=22955
曲目 G.D.スカルッテイ(E.フェルナンデス 編):2つのソナタ Kp.213/Kp.492 J.S.バッハ(福田進一 編):コンチェルト ニ短調 BWV974(原曲 A.マルチェッロ:オーボエ協奏曲) F.ソル:幻想曲《2人の友》 op.41 A.ヒナステラ:5つのアルゼンチン民謡 op.10 より 第3番 サンバ、第5番 ガト G.サントルソラ:ソナタ・ア・デュオ 第1番 吉松隆:アトム・ハーツ・クラブ・デュオ op.70a ほか ※都合により内容が変更になる場合がございます。
日時:2025年1月25日(土)19:00開演
場所:あいれふホール (福岡県)
詳細 : https://www.foresthill-morioka.com/concert/20250125.html
曲目 [Duo] 幻想曲「二人の友」Op.41 (F.ソル) アトム・ハーツ・クラブ・デュオ Op.70a (吉松隆) [ソロ] 福田進一 / モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」による幻想曲〜タールベルグの作品に基づく (G.レゴンディ) エドゥアルド・フェルナンデス / 3つのファンタジア〜「ビウエラ曲集第1巻(1538)」より (L.ナルバエス) ...他 ※曲目は変更となる場合がございます。
「ソル:二人の友」福田進一&エドゥアルド・フエルナンデス(ギター)
MM-4538 / ¥3,520(税込)
1月24日マイスター・ミュージックより発売
Apple Music / Amazon Music / mora /レコチョク/ spotify / qobuz ほかで配信予定
福田 進一 ギター 11才より故 斎藤達也(1942-2006)に師事。1977年に渡欧、パリ・エコールノルマル音楽院にてアルベルト・ポンセに、シエナ・キジアナ音楽院にてオスカー・ギリアに師事した後、1981年パリ国際ギターコンクールでグランプリ優勝、さらに内外で輝かしい賞歴を重ねた。世界数十カ国の主要都市でリサイタルを行い、バロックや19世紀ギター音楽の再発見から現代作品まで、その幅広いレパートリーと、ボーダーレスな音楽への姿勢は世界の音楽ファンを魅了している。 教育活動にも力を注ぎ、その門下から鈴木大介、村治佳織、大萩康司といったギター界の実力派スターたちを輩出。それに続く新人たちにも強い影響を与えている。現在は、世界各地の音楽大学でマスタークラスを開催、上海音楽院(中国)、大阪音楽大学、広島エリザベト音楽大学、アリカンテ大学(スペイン)において客員教授を務めている。 平成19年度、日本の優れた音楽文化を世界に紹介した功績により、外務大臣表彰を受賞。平成23年度芸術選奨・文部科学大臣賞をギタリストとして初めて受賞した。公益社団法人日本ギター連盟名誉理事。 エドゥアルド・フェルナンデス ギター エドゥアルド・フェルナンデスは現代のギター界をリードする存在として世界的に認められている。1952年にウルグアイに生まれ、7才からギターを学び始め、演奏をA. カルレバーロ、作曲と理論をG. サントルソラ、そしてH. トサールに師事したのち、その圧倒的な技術と音楽性によって、72年ポルト・アレグレ(ブラジル)、75年ラジオ・フランス(パリ)77年アンドレス・セゴビア(マジョルカ島/スペイン)など数々の国際ギター・コンクールに入優勝を果たし、頭角を現した。 「最高級のギタリスト!…これは稀に見る、あらゆる楽器を超越した印象的なデビューだ。」と評された77年のニューヨーク・デビュー以来、その世界的活動は止む所を知らない。83年のロンドン・デビューも聴衆に大きな衝撃を与え、名門デッカ・レコードと契約。さらに、世界各国での教育活動にも力を入れている。また、「ギター演奏理論」「バッハのリュート音楽に関するエッセイ集」などを執筆。日本でも出版(現代ギター社刊)されている。
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています